Small impressions

“Small impression 1&2”

作品を二回に分けてご覧いただけます。現在は第一部の作品をすべて入れ替え、第二部を開催中。是非足をお運びください。
最終日は3月17日となります。会場では、作品のほか、ポストカードやTシャツの販売も行っております。

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Small impressions project  (森と道のシリーズ)
まず紙の上にペンを使ってイメージを描き始めることから始め、今回みなさまにお見せする作品群、2012年の東南アジアへの旅行で触発されたことに始まる「日常の延長線上に広がっていく情景」のイメージを少しずつ構築していきました。
そして、日本で多くの人が「消しゴムハンコ」として楽しまれているハンコ用の消しゴム素材の代わりに、身の回りにある小さなゴム版や樹脂などを使ってスタンプを作り、作品作りを始めました。消しゴムを始めとするこうした素材は、「print=インクで写す」という作業に対して柔軟性があり、紙の上でイメージを織り上げていくのにとてもいいと感じました。
わたしは、筆を使った“本流”の画とは一味違った未知の世界に踏み込むわくわくした気持ちで、心に浮かんだイメージをスタンプを使って表現する時、とても開放感を感じることができました。 いくつかのイメージはスケッチで前もって決まっていましたが、その他のあいまいなイメージはスタンプを押していくうちに作品の中で少しずつ育まれ、進化し、ひとつの作品となっていきました。
個性あるひとつひとつの印影
ハンコを押すことでできるひとつひとつの印影は、同じゴム判からできたインクの跡ではありますが、その印影には濃淡の違いをはじめとして、それぞれにアイデンティティがあります。紙に現れた印影のそれぞれに独自の性格や、強さがあり、まるでカンバスの上に描かれた一本一本の筆の跡のようでもあります。
そして、それはまるで人間同士の関係のように、隣り合わせた印影は互いに強い影響を、またその先に続く印影には弱まりながらも消えることのない影響を及ぼしています。時にわたしたちは、隣に誰かが居あわせただけで、お互いのことを知らないにも関わらず強く影響しあうことがあります。判の重なり合いも、すでに押された印影を次の印影が完全に覆い尽くすことは決してなく、深い網のように、絡み合った枝のように、それを通してさらに奥を見ることができるようなそれぞれの人生の営みのようなきめを作り出しています。
―スタンプアートの魅力と今後について
スタンプアートを作るにあたり、中国や日本の墨絵―自然からのインスピレーションを含めた“素材”を得、ときに架空の風景のようにも見える水墨画を参考にしました。(今回の展示作品から、水墨画に共通した部分を感じていただけましたか?)
アルゼンチンで生まれ育ったわたしが中国・日本の文化に触発され、自分のアイデンティティを日本の文化を通して表現している点をおもしろいと思っていただけると嬉しく思います。
そして、消すため道具、消しゴムで何かをを作り上げる。そのおかしな矛盾もわたしがスタンプアートに大変興味を引かれる部分です。
 心を自由に解き放って、小さなハンコを作りそれを組み合わせ描く、そして今回わたしはステンシルという西洋のアートの技法も製作過程で取り入れています。つまり、スタンプアートは古今東西を問わず、自分自身を表現するのに大きな潜在力を持っているといえると思います。
あなたがこの身近で楽しい表現方法を使って「わたしもなにかが表現できるかも」、と思っていただけたのであれば、この個展は大成功といえるでしょう。
日本では、ハンコを押すという行為は、アートから公的な書類まで日々の暮らしに深く根ざした行為です。ハンコを押すという行為・それが織りなす印影と、人が社会の中で存在していくことはとても似ているように思います。特に日本人にとってはそれがその人自身を表す場面もあります。
ハンコを押す、アイデンティティを確認する、この興味深い関係性を再認識しつつ。
 マルセロ・ニイカド